研究概要 |
高データサンプリング血管径拍動記録装置を用いて、胎児心奇形、不整脈を持った胎児の下大静脈血管径拍動波形について検討した。 対象は、I群:超音波計測上正常発育群68例(妊娠20-40週)とII群:胎児心奇形(Pulmonary Stenosis2例、Tetralogy of Fallot 2例、Ebstein奇形奇形+胎児水腫3例、Ebstein奇形2例)と胎児不整脈(Complcete Atrioventricular Block CAVB2例、Takycardial例、Premature Ventricular Conlraction PVCl例)であった妊娠32-40週。方法は、血管内壁間の動きを高サンプリング(3000Hz)可能なエコートラッキングシステムを備えた超音波装置を使用し、下大静脈の静脈管合流部より末梢側から拍動波形を測定した。 結果は、拍動波形では、三つの山A、C、V波と二つの谷X,Y波が認識され、A波は心房収縮、C波は三尖弁閉鎖、X波は心室収縮、V波は三尖弁開放、Y波は心室拡張に一致していた。I群は、妊娠週数進行(体重増加)に伴いA、V波高が上昇した。右心室収縮に伴う圧較差に比例し右心駆出を反映するXdescent ratio(A-N/A%)と、右心拡張に伴う圧較差に比例し右心充満を反映するY descent ratio(V-Y/V%)も緩やかに増加した。II群は、正常発育胎児のX descenl ratioからA波高の上昇した高拍動群(+1.5SD以上、Pulmonarystceosis2例、Tetralogy of Fallot 2例、Takycardial例、CAVB2例、PVCl例)とX波高の上昇した低拍動群(-1.5以下、Ebstein奇形+胎児水腫3例、Ebstein奇形2例)に分類された。高拍動群のうちPulmonary stenosisは右室圧増加に対して右房収縮が増加するために、また、CAVBとPVCは、心室収縮期に右房収縮が起こるために、A波高が増加した。低拍動群のうちEbstein奇形は三尖弁閉鎖不全を合併するため、右房圧増加のために、V波高が上昇し、さらに、右心収縮力低下によりX波高も上昇した。胎児水腫合併例では、X descent ratioが2SD以下の低下を示した。 下大静脈拍動波形は、胎児心奇形、不整脈においても、成人の中心静脈圧波形と同様に正確な右心機能を反映し、胎児循環動態の新しい指標となると考えられた。
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