研究概要 |
当科では頭頸部癌の放射線治療に際し、5-FU,Vitamin Aを併用するFAR療法を行っている。今回、FAR療法を行った癌細胞はin virto,in vivoでアポートシスをおこして死んでゆくことがわかった。そこで頭頸部癌のなかでも上顎癌、喉頭癌を対象にアポトーシス関連遺伝子産物p53の発現とFAR療法による癌組織のアポトーシス感受性および症例の予後との相関を検討した。上顎癌、喉頭癌ではそれぞれ65%,48%の症例にp53の過剰発現がみられたが、p53発現と予後の間に関連は認めなかった。p53発現とFAR療法後の癌組織のApoptotic Indexの間にも相関は認めなかったが、症例数をふやして再検討する必要がある。p53の過剰発現は癌周囲の正常組織、前癌状態から認められ、病理学的な変化以前の遺伝子レベルの細胞の変化をとらえている可能性がある。今後は野生型p53をin virtoで頭頸部癌細胞に導入し、その抗腫瘍効果をみてゆく予定である。 さらに喉頭癌におけるcyclinD1の発現と症例の臨床経過との関連についても検討した。免疫組織化学的に喉頭癌症例の30.4%にcyclinD1の過剰発現を認めた。1次治療後の腫瘍の再発の有無とcyclinD1発現を検討すると、cyclinD1陽性群の再発率53.5%は陰性群の再発率18.5%に比し有意に高かった。喉頭癌はほとんどの症例がその1次治療をFAR療法にて行っていることから、cyclinD1発現も腫瘍のアポトーシス感受性を左右する因子といえる。
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