研究概要 |
[目的]椎骨脳底動脈系の虚血の際に生じる前庭神経核ニューロン障害の発症メカニズムを解明するために、低酸素による前庭神経核ニューロン障害に対するグルタミン酸の役割についてinvivoで電気生理学的に検討した。 [方法]α-chloraloseで麻酔したネコを用い、7極微小ガラス管を接着した銀製微小電極を前庭神経内側核(MVN)に刺入した。振子様回転刺激に応じるMVNニューロンを同定し、自発性単一ニューロン活動および刺激にて誘発されるニューロン発火を細胞外に記録した。微小ガラス管には非選択的グルタミン酸レセプター拮抗薬であるGDEE,nonNMDA型およびNMDA型レーセプターの特異的拮抗薬であるDNQXおよびAPVをそれぞれ充填し微小電気泳動法により記録ニューロン近傍に投与した。5%O_2+95%N_2の低酸素混合ガスを5分間吸入させた時のMVNニューロン活動の反応およびその反応に対するGDEE,DNQXおよびAPVの影響について検討した。 [結果]低酸素吸入時、MVNニューロンの自発発火は急速に一過性に増加し,その後徐々に減少しながら約2分後に消失した。吸入中止後には発火は徐々に増加し約10分後に吸入前値まで回復した。GDEEおよびDNOXを電気泳動的に投与しておくとこの一過性の脱分極は抑制され,発火の低下および消失は遅れて生じた。一方,APVの投与では,発火の反応は著明な影響を受けず,GDEEやDNQXと同様の効果は認められなかった。 [結論]nonNMDA型グルタミン酸レセプター拮抗薬が前庭神経核ニューロンの低酸素性脱分極を抑制したことから,グルタミン酸、とくにnonNMDA型が、椎骨脳底動脈循環障害によるめまい,平衡障害の発症に重要な役割を演じていると考えられる。
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