研究概要 |
1. 平成9年度の本研究課題において,常染色体優性非症候群性感音難聴の1家系の原因遺伝子が,分子モーター蛋白の1つであるミオシンVIIAをコードする遺伝子であることを同定したことにより,他の常染色体優性非症候群性感音難聴家系や,原因不明の感音難聴症例のなかには,ミオシンVIIA遺伝子変異が難聴の原因となっている症例が存在する可能性が推定された。そこで常染色体優性非症候群性感音難聴家系8家系について,ミオシンVIIA遺伝子変異のスクリーニングを行ったが,今回の8家系には変異は見出されなかった。この8家系のなかで,大きな家系については連鎖解析を行っているが,遺伝子座はまだ決定されていない。 2. X連鎖性混合難聴DFN3は,X連鎖性難聴のなかでもっとも頻度が高く,アブミ骨固着とアブミ骨手術時に外リンパ漏を伴う混合難聴を特徴とする。DFN3の原因遺伝子として,POU-domainに関する転写因子をコードするPOU3F4遺伝子が発見されているが,今回DFN3の1家系を対象に,POU3F4遺伝子変異を検索したところ,新しい原因遺伝子変異を同定した。X連鎖性混合難聴では,日本で初めての原因遺伝子変異同定となった。この変異部位は異種生物間で高度に保存されたアミノ酸をコードしており,転写調節に重要な働きをしている部位と考えられる。
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