ラットを使用し実験を行った。外耳道後方に径2〜3mmの小孔をドリルにて作製した。その小孔から正円窓膜上に銀ボール電極を挿入固定し、正円窓をシリコンで充填した。特製の微細ガラス管のついたマイクロピペットをシリコンで充填された正円窓に挿入した。特殊硬化剤で微細ガラス管を正円窓に密閉固定し、マイクロピペットを使って外リンパ腔内の外リンパ液を微量の引圧で吸引したり、または外リンパ腔に微量の空気を送り込むことによって外リンパ瘻の状態を作り出した。 覚醒した状態において体動を制限し、正円窓膜上の銀ボール電極を近位電極とし、頸部筋肉に刺した電極を遠位電極、接地電極とした。被検耳外耳道入口部にスピーカーより自由音場で音刺激を与え、蝸電図を施行したが、個体による結果に差があり、解析をするには至らなかった。2年目の目標は、外リンパ瘻の状態を作り、経時的変化を蝸電図で追い、さらにはプロメタジンやバゾプレシンのV2-RECEPTERのBLOCKERを腹腔内投与したり、内耳窓閉鎖術を施行した状態にしての蝸電図の変化を時間経過で追うこにあった。そして、実験上ではあるが内耳窓閉鎖術における内耳機能の回復可能な期間を蝸電図上の変化において求めてみることにあった。しかし、実際はコントロールとなるべき蝸電図において個体差がかなりあり、様々な負荷における変化を把握できず、当初予定した結果を導き出せなかった。 外リンパ瘻に対しては様々な角度から研究しており、臨床においては重心動揺検査を利用できないかを検討した。外リンパ瘻における内耳窓瘻孔の有無を診断に応用できないかと考え、外耳道より圧負荷刺激をかけて重心動揺を測定した。その結果、外リンパ瘻の術前診断において圧負荷重心動揺検査が補助診断になりうると考えられた。
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