研究概要 |
末梢神経に含まれるシュワン細胞には視神経再生の促進作用があることを、これまで明らかにしてきた.そこで視神経の再生率の向上を計るためにシュワン細胞を単離培養し、人工的移植片を作成することを目的とした.研究方法としては新生仔ラット(Wistar種)脊髄後根神経節よりシュワン細胞を単離・培養し、細胞数約106/mlとなるように細胞外基質を80%、神経成長因子BDNF、NT-4,NGFを50ng/ml濃度にて調整し、内径1mmのシリコンチューブへの充填によって人工移植片を作成した.成熟ラット(Wistar種)の視神経を眼窩内で切断し人工移植片を眼球側視神経に移植した.る視神経再生の評価として免疫組織化学、電子顕微鏡等を用いて観察した.移植片内へのDil投与によって網膜神経節細胞を逆行性標識し、生存・再生した細胞数を無処置の対象群と比較し、生存率をMacintosh NIH imageを用いて解析した.術後2週および3週において、視神経線維が人工移植片内に伸長しているのが確認された.また、人工移植片内の神経線維にGAP43の局在を認め、L1,NCAMの細胞接着因子を発現していることがneurofilamentとの2重染色によって示された.またミエリン蛋白MAGに関しては、術後2週目以降において陽性線維が人工移植片内に確認された.電子顕微鏡では移植片内の多くの再生線維がシュワン細胞と接触しており、細胞外基質成分のなかを伸長する像は認められなかった.移植片内Dil投与による網膜神経節細胞の逆行性標識において約20%前後の生存・再生率を認めた.これらの結果より培養シュワン細胞を用いて人為的に作成した人工移植片の環境であっても視神経の再生が誘導可能であること、また末梢神経移植による再生時同様、シュワン細胞を足場として伸長しており、L1,NCAM等の細胞接着因子の発現が見られた.再生線維においてMAGの発現もあることから、人為的環境内であってもミエリン化が起きる可能性が示唆された.
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