研究概要 |
レーベル遺伝性視神経症(LHON)の発症に、神経の興奮性毒性が関与している可能性が示唆されている。これを検証する手がかりとして、LHON患者および種々の視神経症を有する患者から脳脊髄液(CSF)を採取し、種々の興奮性(EAA)および抑制性アミノ酸(IAA)濃度を測定し、比較した。グルタミン酸やアスパラギン酸等のEAA濃度は、LHONと視神経炎患者間で有意差はなかった。IAAの一つタウリン濃度は、LHONや視神経炎,轡者に比べ、虚血性視神経症(ION)患者では有意に低かった。LHON患者は視神経炎患者と比較し、CSF環境に大きな違いはなく、より局所の発症誘発因子を同定する必要があると思われた。ION患者は、LHONや視神経炎患者に比べ、発症年齢が高かったこととから、ION患者におけるCSFの低タウリン濃度は、加齢による影響を受けている可能性もあり、加齢は、興奮性毒性に対する脆弱性の因子の一つである可能性が示唆された,一方、視機能障害様式の解析として、視覚伝達路の中で大細胞系の反応を検出すると考えられている中心フリッカー(CFF)値が、種々の視神経疾患に比べ、LHONでは回復する例が多いことが分かった。通常の視神経疾患は視力回復後もCFFが低値であるが、LHONはこれとは逆に視力障害が残存してもCFFが改善する、逆CFF-視力相関のあることが判明した。既にLHONでは、対光反応を司るW網膜神経節細胞が比較的障害されにくいことが知られている。上記の知見は、LHONの特異な視機能障害様式、すなわちX細胞の比較的選択的障害の可能性を反映しているものと思われた。
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