研究概要 |
申請者は,誘電分散理論に基づき,線維柱帯の房水排出機能を定量的に評価し,臨床応用への道を探ることを目的としている.前年度から引き続き,本年度は誘電分散法による緑内障定量的診断法開発の前段階として,摘出眼球およびin vivo眼球を用いての誘電測定および誘電解析を行った.開放隅角緑内障の発生原因となる線維柱帯の微細構造の変化と,それに伴う房水排出機能の変化を,交流電場中での誘電挙動の変化として捉え得る可能性は大きい.まず,摘出眼球を用いた実験結果で,眼圧に無関係に角膜輪部から0.5mm強膜側の直上で,線維柱帯の誘電挙動が観察可能であり,線維柱帯での房水のフローを増加させると,さらなる分散現象のブロード化を認めたことから,本法により観察可能な線維柱帯の誘電挙動は,その微細構造のみでなく,房水排出機能をも反映している可能性が証明された. さらに,in vivo眼球を用いての実験においても,やはり眼圧に無関係に角膜輪部から0.5mm強膜側の直上で,線維柱帯の誘電挙動が観察可能であったが,in vivo眼球では,心拍に伴う眼圧の脈波の影響を受けるため,誘電測定データにおいても,脈波に伴うデータのバラツキが観察された.この脈波に伴うデータのバラツキのため,直接raw dataから得た誘電率・導電率をloss tangentに変換した場合,やはりデータのバラツキは避けられない.そこで一旦,2項Cole-Cole式でカーヴ・フィッティングをした後,即ち,誘電分散理論に基づき,いわばスムージングした後,loss tangent表示をする事により,in vivo眼球においても線維柱帯の誘電挙動が観察可能であった.今後は,in vivo眼球で実験的緑内障を作製して,線維柱帯の房水排出機能の変化を調べる予定である.
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