研究概要 |
目的:我々は、ヒトS抗原の一部分のアミノ酸配列(TLTLLPLLANNRERRGIALD,Fragment#29)はMHCクラスIIの多型性に関係せずT細胞応答を誘導するpromiscuous peptideであることを明らかとした。本年度の研究では、#29に感作されたT細胞が認識する#29の構成ペプチドをラット系統間で検討し、その認識に差があるかどうかを検討することを目的とした。 方法:#29の構成アミノ酸配列で15アミノ酸長を持ち、1アミノ酸づつ重複するペプチドを合成した。#29ならびに15アミノ酸長ペプチドに感作されたルイスラット所属リンパ節細胞のペプチドに対する増殖反応およびぶどう膜炎惹起能を検討した。また、これらのペプチドがMHCの異なる4系統のラットにおいて、#29に感作されたリンパ節細胞に細胞増殖反応を誘導できるか否かを検討した。 結果:ルイスラットにおいてはTLTLLPLLANNRERR,LTLLPLLANNRERRG,TLLPLLANNRERRGI,LLPLLANNRERRGIAに#29感作リンパ球に対する抗原性を認めたが、その内TLTLLPLLANNRERRのみにぶどう膜炎惹起能が認められた。基本的に#29は、いずれの系統においても免疫応答ならびにぶどう膜炎を誘導することができたが、#29に感作されたリンパ節細胞が認識する15アミノ酸長ペプチドは系統間で異なっていた。 結論:ぶどう膜炎惹起能、免疫応答の観点からすると、ルイスラットにおいては、#29のコアペプチドはTLTLLPLLANNRERRであることが明らかとなった。また、#29は多くの系統のラットに認識されるものの、MHC接触部位あるいはT細胞認識部位は系統により異なる可能性が示唆された。
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