研究概要 |
申請者は平成10年度において以下の事実を明らかにした。1. ヒト健常組織のリンパ管は、白血球接着因子の中で、PECAM-1のみを発現する。2. ヒトリンパ節皮質辺縁には5'-nucleotidase活性とPECAM-1の発現がともに強い活性化リンパ球が観察される。以上1.2.の結果は、ヒトリンパ管内皮細胞がPECAM-1を介してリンパ球と接着する可能性を示すものである。3. CD4+およびCD8+αβ+T細胞が種々のヒト組織内リンパ管に存在する。4. 多数の血管がMHCclassIIを発現しているヒト炎症組織において、ICAM-1,ICAM-3,PECAM-1および VCAM-1を発現しているリンパ管が存在する。5. マウスリンパ管は通常ICAM-1を発現しないが、TNF-αおよびIFN-yを腹腔に投与したマウスの腸管膜では、 ICAM-1を発現しているリンパ管が存在する。 以上3.4.5.の結果は、リンパ管は通常PECAM-1のみを発現するが、炎症組織内のリンパ管内皮細胞は種々の白血球接着因子を発現すること、その発現は炎症性サイトカイン依存性に増大することを示唆している。 本研究は、組織内リンパ球の組織からリンパ管内への移動にリンパ管内皮細胞が発現する接着因子が寄与する可能性を示すものである。このことは以後、免疫担当細胞のリンパ循環系のならびに腫瘍のリンパ節転移機構の研究に大きく貢献すると考えられる。
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