研究概要 |
インドの男性における癌の1位を占める口腔癌の発症要因を本邦との比較において明らかにする目的で、ras、p53遺伝子変異の内容、並びに他の口腔癌関連遺伝子としてのEGFR,FHIT変異とヒトパピローマウイルス(HPV)の関与を解析した。その結果(1)ras変異,46例中9例(20%)に変異を見い出し、その内訳はH-ras8例(コドン12、6例、コドン13、1例、コドン59 1例)、N-rasが1例(コドン12)であった。なおH-rasコドン59の変異はヒト癌では始めての例であるがHarvey株マウス肉腫ウイルスにあり活性化変異である。なおインドでのra変異率は本邦および欧米での変異率(3-10%)と比較し高い。 (2)P53変異遺伝子の機能解析 インドの口腔癌で見つかりこれまで報告例が少ない変異について解析した a.149プロリン変異 低温で野生型p53と同様にHSP70プロモーターの転写活性を抑制し、高温(37.5C)では典型的な変異型と同様に転写を活性化できる温度感受性変異であった。さらに活性化に関与する責任配列を、HSEとその変異配列を用いて解析したところ最終的にHSEそのものであることが判明した。なお本変異のアポトーシス誘導能を含む生物学的諸性質ついてはこれまでの解析では野生型との大きな差は見い出されていない。b. 205アスパラギン酸、274アラニン変異についても変異遺伝子を作成し、各種プロモーター/レポーター/CATプラスミドを用いて解析したところいずれも典型的な変異型P53変異遺伝子であることが判明した。 (3)他の癌関連遺伝子変異とHPVの関与 EGFRの増幅が40%に見い出されたが、Prad1,Fhit遺伝子変異はあまり見い出されなかった。またHPVについてはインド南部の子宮頚部癌では高率に検出されたが同じ南部の口腔癌では検出できなかった。
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