骨格系組織の発生、分化機構において、BMPならびにその拮抗分子nogginが重要な働きをしている可能性を、これまでの研究で明らかにしてきた。すなわち、成体での異所性骨誘導を指標として単離されたBMPが、胎児での骨格形成の初期にそのリガンドとレセプターが発現し、さらにその部位でBMPタンパクが機能しうること、noggin遺伝子も骨格発生部位で特異的に発現することを明らかにした。本年度はBMPとnogginの相互作用を調べる目的で、両者の遺伝子発現の空間的時間的な差異をより詳細に検討し、さらに器官培養系を用いたnogginの発現制御について調べた。骨格前駆細胞の凝集が始まるマウス胚11.5日齢から13.5日齢において、BMP7とnogginが骨格発生部位の非常に近接した部位で発現すること、BMP2やBMP4とnogginの発現部位は離れていることを見いだした。また15.5日齢胚の肥大軟骨層に至るまでnogginの遺伝子発現が持続していることがわかった。nogginの発現制御に関しては、マウス胚11.5日齢から取り出した組織(肢芽、体幹の組織)にBMP7を埋入し、器官培養を行ったところ、埋入後24時間以内に、nogginの強い発現誘導が起きることを見いだした。同じ部位に軟骨前駆細胞の形質マーカーである、2型コラーゲンやSox9の遺伝子発現も誘導されることから、nogginの発現誘導は軟骨前駆細胞群において起きていることがわかった。これらの結果から、骨格組織発生において前駆細胞凝集が行われる部位に、BMP7とnogginが近接して発現し、その両者の間には密接な相互関係がある可能性が示唆された。
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