研究概要 |
顎関節における特徴的な疾患である変形関節症(OA)や慢性関節リウマチ(RA)では,どちらも病理組織学的には顎関節を含む多くの関節軟骨が破壊されることが観察されており,関節液中に軟骨細胞の破壊成分が放出されると思われる。さらに自己免疫疾患の一つであるRAに関しては特にその破壊軟骨に対する抗体が出現すると報告されている。本申請課題では,前半の1年目で軟骨細胞様培養細胞株HCS-2/8細胞からのRA患者血清で特異的に認識される蛋白(RA-A47)の単離精製,そのN一末端アミノ酸配列の解析を行い,ヒトコラーゲン特異的分子シャペロンHSP47遺伝子であるcolliginホモローグであるcolligin-2遺伝子から推定されるアミノ酸配列と完全に一致すること,さらにRA-A47蛋白はコラーゲン結合能を有することを見い出し,これらの結果からRA-A47蛋白が未同定のcolligin-2遺伝子の翻訳産物ではないかと仮定した。そこで後半の本年度では,さらにこのRA-A47の構造を明らかにするため,HCS-2/8からra-a47 cDNAの蛋白コード領域を単離し,塩基配列を決定した。その結果,ra-a47 cDNAはcolligin-2 cDNAと3塩基,類推されるアミノ酸配列でも2残基異なっているが,それ以外は全て一致していることから,ra-a47とcolligin-2は同一の遺伝子であると結論付けた。同時にHeLa細胞からもra-a47 cDNAの単離番行い,HCS-2/8由来のra-a47 cDNAとの比較を行ったところ,1塩基HCS-2/8に特異的な部分が存在していたが,アミノ酸配列ではHCS-2/8由来,HeLa細胞由来のra-a47 cDNAに違いは見られなかった。なお,この配列はgenomic DNAでも一致していることが確かめられ,さらにcolligin geneはいずれの細胞でも単離できなかった。このra-a47 geneは42℃の培養で誘導を受けることも明らかとなったことから,RA-A47/Colligin-2はHSP47として機能していると考えられる。 また,HCS-2/8細胞に慢性関節リウマチにおいて関節液中への放出が報告されているTNFαを作用させるとn-a47/colligin-2mRNAの発現量は減少するがtype II collagen mRNAの発現量は変化せず,合成されるコラーゲンと分子シャペロンとの産生量に不均衡が生じることを昨年度報告したが,この条件下で抗体を用いた吸収実験から細胞表面にRA-A47が出現しており,また,培養上清中にもRA-A47が存在していることが確かめられ,TNFαなどの作用により本来細胞内にしか存在しないRA-A47の局在が変化するとともに細胞外に放出されたRA-A47が自己抗原として提示されるのではないかと考えている。
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