研究概要 |
中枢神経活動の変化の中でも、特に、加齢や病態におけるacetylcholine(ACh)のシグナル伝達の低下減少に興味を持ち、M3受容体を介するアラキドン酸代謝物の生理的役割を追求すべく研究を行っている。 今回、培養ヒトneuroblastomaのcell line.SK-N-SHを用いて、アラキドン酸カスケードの5-lipoxygenaseやその代謝物について、細胞障害に関わるかどうかを検討し、以下の知見を得た。(前回、アラキドン酸カスケードの5-lipoxygenaseやその代謝物が、腸管縦走平滑筋のAChの収縮(M_3受容体)におけるCa^<2+>流入に関与する可能性を報告。) 1. 5-lipoxygenaseの阻害剤、AA861はMTT(3-(4,5-dimethyl-thiazole-2-yl)-2,5-diphenyl tetrozolium bromide) assayにおいて細胞増殖を抑制した。 2. 5-lipoxygenaseの代謝物leukotriene D_4(LTD_4)のantagonist、MK571はMIT assayにおいて細胞増殖を抑制した。 3. H_2O_2はMTT assayにおいて細胞増殖を抑制した。 4. H_2O_2による処置によりcaspaseの活性を認めなかった。 以上の結果より、M_3受容体の情報伝達の一部を担う5-lipoxygenaseや5-lipoxygenaseの代謝物が細胞障害にも関与する可能性が示唆された。一方、細胞死の指標の一つであるcaspaseの活性については、positive controlとして使用したH_2O_2もその活性を認めなかった。このことに関しては、spectrofluorometerの不調によるものか(実際、酵素活性表示のためのAMC単独で蛍光表示を示さなかった。)、過酸化水素のcaspaseに対するdual regulation効果(FEBS L.1997)によるものか、あるいは、cell line.SK-N-SHの特性によるものかについて検討中である。
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