研究概要 |
唾液タンパクの分泌機構にcAMPがセカンドメッセンジャーとして働いていることはよく知られているが,耳下線におけるcAMP分解系はこれまでによく調べられていなかった。本研究は動物種間の耳下線ホスホジエステラーゼ(PDE)アイソザイムの違いを調べ,エクソサイトーシスに対する制御機構を考察することを目的としている。本年度はラット,マウス,ハムスター,モルモット,ウサギに続きウシの耳下腺PDEアイソザイムを分画し,PDEファミリーの同定を行った。また,これら動物の耳下腺mRNAを採取してラット由来のPDE4ファミリーのRT-PCRを行った。 1. ウシのPDE活性の細胞内分布を調べた結果,全活性の65%が可溶性画分に,34.5%が1,000 x g pelletに存在し,100,000 x g pelletにはほとんど活性が見られなかった. 2. ウシの可溶性画分をMono Q ion-exchange力ラムにより分画した結果,4つの活性ピークを得ることができた。すなわち2つのGMP-stimulated PDE(PDE2)および,cAMP-specific PDE(PDE4)と考えられるアイソザイムが存在したが,もうひとつのピークは既知のPDEアイソザイムと異なる性質を有していたため,現在再検討中である。 3. げっ歯類の耳下腺mRNAを用いたRT-PCRの結果,マウスおよびハムスターにおいてPDE4Bが認められた。また,ハムスターではPDE4Dも認められた。PDE4の活性が認められなかったモルモットはやはりRT-PCRでもPDE4アイソザイムは認められなかった。 4. ウサギおよびウシのRT-PCRの結果,いずれのPDE4アイソザイムも認められなかった。これらの耳下腺においてPDE4活性を認めていることより,ラットPDE4ファミリーとの塩基配列の違いが示唆された。以上の結果と昨年度の結果から,動物種による耳下腺PDEアイソザイムの多様性が示された。
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