本研究の背景はHIVが経口感染しない理由から唾液成分の生体防御機能に着眼し、さらに唾液由来の物質が口腔内の組織に存在すると思われるHIVレセプターに対してアゴニストの働きや、そのレセプターを障害しているのではないかという仮説をたてた。この仮説の証明から、HIVとレセプターの結合阻害を唾液由来物質が可能であるならばエイズの感染阻害薬の開発の道の可能性を示唆するものとなるであろう。その第一段階として感染防御機構の解明のうえでもレセプターの同定は極めて重要である。本研究では口腔内組織のCD4の検出を試みた。口腔内の細胞はヒト歯牙を抜去時に歯牙に付着した歯肉片より歯肉上皮細胞、歯肉線維芽細胞、歯根膜線維芽細胞を分離しOut growth法で継体培養を行った。それぞれの細胞を用いウエスタンブロット法とフローサイトメトリー法で分析した。すなわち、ウエスタンブロット法では坑ヒトCD4抗体を、フローサイトメトリー法ではFITC標識坑ヒトCD4抗体のそれぞれを一次抗体とし細胞との反応を検討した。ウエスタンブロット法では坑ヒトCD4抗体との反応はみられなかった。一方フローサイトメトリー法では細胞にFITC標識坑ヒトCD4抗体との反応がみられた。これらの相違は分析法による感度の違いと考えられるが、フローサイトメトリー法で歯肉上皮細胞、歯肉線維芽細胞、歯根膜線維芽細胞の細胞膜上にCD4の存在が確認できた。以上の口腔内細胞にCD4が確認されたことからHIVがこれらの細胞と結合することが考えられることになる。
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