研究概要 |
口腔扁平苔癬の上皮細胞間接着機構の変化を明らかにするために、15症例の口腔扁平苔癬を対象とし、対照症例として3例の正常頬粘膜と3例の正常歯肉および角化病変として3例の歯肉白板症について、デスモソームカドヘリンであるDsg1,Dsg2,Dsc1,Dsc3の局在を検討し、以下の結果を得た。 1. Dsg1の局在は、正常口腔粘膜および歯肉白板症では基底層から有棘層に陽性反応を認めた。この陽性反応は上皮組織の角化の程度と相関があった。一方、口腔扁平苔癬では基底細胞の融解変性と固有層の細胞浸潤の程度が大きい程、有棘層におけるDsg1の局在の低下が認められ、病変によりDsg1の局在に変化が起きていることが示唆された。 2. Dsg2の局在は、正常頬粘膜と歯肉白板症では陰性であり、正常歯肉と口腔扁平苔癬の過角化した組織の基底細胞に陽性反応を認めた。即ち、軽度に角化した上皮の基底細胞にのみDsg2の局在が認められた。 3. Dsc1の局在は、非角化上皮では陰性であり、角化亢進した口腔粘膜の有棘層上層で局在が認められた。口腔扁平苔癬でも角化亢進した有棘層上層で、Dsc1の不規則な陽性反応が認められ、角化亢進と相関する局在を示した。 4. Dsc3の局在は、正常口腔粘膜、歯肉白板症および口腔扁平苔癬で基底層から有棘層に陽性反応を認め、この陽性反応は上皮組織の角化の程度と相関があった。 以上、口腔扁平苔癬の頬粘膜上皮では、基底細胞の融解変性と固有層の細胞浸潤により有棘層のDsg1の局在は低下するが、一方、過角化によりDsg2,Dsc1,Dsc3は増加していることが明らかとなった。口腔扁平苔癬における上皮細胞間接着機構の変化は、デスモソームを構成する接着分子の構造変化と局在する量的変化が起きていることが考えられた。
|