研究概要 |
ヒト血漿へ放射線(X線)を照射し,発生するフリーラジカル量と血漿内の総蛋白質(TP),アルブミン(ALB),総コレステロール(TC),そして,中性脂肪(TG)の各濃度にどのような影響を及ぼすかを検討した。 対象は本研究の同意を得た約100名のボランティアの静脈血を用いた。採血した血液は速やかに×1,600g,5分の条件で遠沈にかけ血漿を分離した。TP,ALB,TCとTGの各濃度は日立7150 Automatic Analyzerにて測定した。X線照射の線量は4,8,12Gyで行い,発生したフリーラジカルはESR測定装置にて測定した。ラジカル量の測定は標準試料であるMnとの相対信号強度(RSI)で決定した。 X線照射でヒト血漿から発生するフリーラジカルはHならびにOHラジカルで,個々のラジカルは照射線量の増加との間で直線的な比例関係を認めた。 同一X線量において発生するラジカル量には血漿の個体差によって変動がみられた。また,HならびにOHラジカルと血漿内の各成分濃度との間には,照射したX線の線量にかかわらず,相関関係は認めなかった。4GyのX線照射におけるOHラジカルと血漿内の各成分濃度との相関係数は,TPではr^2=0.010,ALBではr^2=0.003,TCではr^2=0.008,そして,TGではr^2=0.010であった。 また,本研究で新たにB型肝炎ウイルスに対する抗体(HBs抗体)を保有する者において、X線照射で発生するラジカル量との間に若干の知見が得られた。これは今後の検討を課題とされる。
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