研究概要 |
新鮮抜去歯の頬側あるいは舌側歯頚部に円柱窩洞を形成し、従来型グラスアイオノマーセメント(FujiIonomerTypeII:FJ)、光硬化型グラスアイオノマーセメント(FUJIIONOMERTYPEIILC:LC),フッ素含有ボンディング剤を含むコンポジットレジンシステム(FLUOROBOND+LITE-FILIIA:FB)およびコントロールとしてフッ素非含有コンポジットレジンシステム(LinerBondII+CLEARFILAP-X:LB)のいずれかを充填した。水中に1,4週間浸漬後,充填物を通る切片を作製し、試料表面を10%H_3PO_420秒間処理後、AFMLine-analysisを用いて接着界面の形状解析を行うとともにEPMAによるフッ素分析を行った。AFMLine-analysisの結果、FJでは1週後から、LCでは4週後において界面象牙質が内部象牙質に比較して高い層が認められ、セメントに接する界面象牙質が10%H_3PO_4処理に対する耐酸性を有していた。4週後、耐酸層の窩底に垂直な方向の幅は、FJ:34.02(±28.21)μm,LC:13.73(±8.93)μmであった。また、EPMAによる分析ではFJ(1,4週),LC(4週)とも界面象牙質において表層ではフッ素濃度が高く、深部に移行するに伴いフッ素濃度が低くなる濃度勾配が観察され、セメントから界面象牙質へのフッ素の移行が確認された。AFMで認められた耐酸層とEPMAで確認された象牙質へのフッ素拡散部位は概ね一致しており、象牙質の耐酸性はセメント含有フッ素が象牙質内部に拡散したために獲得されたものと考えられた。一方、フッ素含有ボンディング剤をシステムに含むFBにおいてはコントロールのLB同様、充填4週後では界面象牙質の耐酸層は確認されなかった。水中浸漬期間を1年半まで延長した結果、EPMAでは象牙質へのフッ素の移行が確認されたがAFMLine-analysisでは耐酸層が明確ではなかった。以上の結果から、接着様式が修復物含有フッ素の象牙質への拡散に影響を及ぼし、その結果、齲蝕抑制効果に影響を与えることが示唆された。現在、プラークを用いた人工齲蝕系において接着様式が修復物の齲蝕抑制効果に及ぼす影響を検討中である。
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