研究概要 |
1. 歯学部学生臨床実習における感染事故実態調査. 平成9年度東京医科歯科大学歯学部附属病院における卒前学生(71名)の臨床実習中に発生した学生の皮膚等への損傷事故発生件数は52件(感染事故発生率:0.38%)であった.事故内容で最も多かったのは,使用した器具類洗浄時に鋭利な器具で手指を傷つけるケースであった.また,事故時の看護婦等による第三者による援助について,感染事故を経験した学生の57.6%が役にたったと回答した.調査結果より,感染事故予防法の具体的な情報を学生に与え,事故発生時には指導者等にその旨を隠さず報告させ,さらに職員等による救護体制があることを学生に周知徹底させる必要があると考えられた.今後,学生に十分なHIV感染予防歯学部教育および訓練をしuniversal precautionsの考え方を一層徹底させる必要があると思われた. 2. エイズ歯科診療相談窓口の公開. 都内歯科医師からの相談で最も多い件数が歯科診療HIV感染対策についてであった.また,診療中に鋭利な器具による暴露感染事故直後の対応相談もあった.HIV陽性患者(PHA)からの相談は,診療受け入れ可能な開業歯科医院の紹介依頼が最も多く寄せられた.また,通院可能なPHAの歯科医療に対するニーズの変化としては,今まで隠してきたHIV感染事実を主治医である歯科医師に告げたい傾向になってきたことが認められた. 3. HIV歯科診療ネットワーク HAART療法により,エイズ関連口腔症状の発生数が減少したと思われる.今後,他科PHA診療専門医およびPHAグループとネットワークを構築し,チーム医療体制作りが必要であると思われる.
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