研究概要 |
B.forsythusは、約十年前に同定、命名されて以来行われた疫学的研究により、最も有力な歯周病原因菌であるという結果が得られている。また,申請者の前年度の研究により,この菌がヒト細胞と複雑な相互作用をしていることが明らかになっている.そこで、B.forsythusの病原性をさらに解明するためにこの菌と宿主細胞との相互作用についての研究を行い、以下の結果を得た。 1) B.forsythus臨床分離株を用いて、そのヒト培養上皮へのサイトカインのmRNA発現誘導について検討した。癌化した上皮細胞(HeLa細胞およびKB細胞)では,この菌の接触によりIL-6,IL-8のmRNAが発現誘導され,癌化していないヒト歯肉由来培養上皮細胞(HGK)では,IL-1βとIL-8のmRNAが発現誘導された. 2) HGKでは,これらのサイトカインは,ELISA法により蛋白質レベルでの産生誘導まで なされていることが確認された. 2) HGKでのサイトカイン産生誘導能は時間依存的であった.また,非癌化上皮において,IL-8を産生誘導する物質は菌体の簡単な洗浄により上清に移行することから,比較的歯体とゆるやかに結合している物質であることが考えられた. 以上の結果より,B.forsythusは,生物学的バリアーとして働いているヒト粘膜上皮に対してサイトカイン産生を誘導することにより,上皮下組織の炎症の発症や成立により重要な役割を果たしている可能性があること,また,従来の研究者の培養腫瘍細胞を用いた方法では,正常細胞とは違った結果が導かれている可能性があることが明らかになった.
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