研究概要 |
今日までに私達は細胞の分化・機能発現に重要な役割を果たしているc-jun、jun-B両遺伝子がウシ歯胚の象牙芽細胞系列のみに発現していることをIn situ hybridization法を用いて明らかにした。特にjun-Bは幼若象牙芽細胞において強く発現していることから、jun一Bが象牙質形成初期の活発な幼若象牙芽細胞において特異的役割を果たしていることが示唆された(J.Dent.Res.,76:822-830,1997)。これらの結果はラット歯胚においても確認している。さらに私達はラット上顎第1臼歯近心面にClassVの窩洞形成を行い、術後1日、3日、5日、7日および14日目の修復象牙質形成時の歯髄細胞におけるc-jun、jun-Bの発現を検討した。未処置ラット歯髄ではc-junは象牙芽細胞層で発現していたがjun-Bは全ての歯髄細胞で発現していなかった。しかし一旦窩洞形成を行うとc-jun、jun-B両遺伝子が窩洞直下の歯髄細胞に発現することが明らかになった。このことからc-junは初期、二次および修復象牙質形成の全過程を通して象牙質形成に関わる細胞の転写制御に関与すること、またjun一Bは初期および修復象牙質形成といった活発に象牙質形成を行っている細胞の転写制御でのみ特異的役割を果たすことが示唆された(J.Dent.Res.,78:673-680,1999)。今後は、ラットに形成した窩洞にコンポジットレジンや酸化亜鉛ユージノールセメントなどの修復材を充填後、修復材直下の歯髄におけるc-jun、jun-Bの発現を細胞分化制御の点から、またアポトーシス細胞の出現を細胞死制御の点から比較し、各種修復材の歯髄に対する為害作用を検討していく予定である。
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