研究概要 |
酸化亜鉛ユージノール練和物(ZOE)から遊離したユージノールが,水酸化カルシウム・蒸留水混和物を通過し,象牙質を経由して歯髄組織に到達するか否かについて検討した。 1) ^3H-ユージノール(放射能濃度:100μCi/ml)と酸化亜鉛を練和した^3H-ZOE(混液比=4.0)をチューブに填塞し,水酸化カルシウム・蒸留水混和物,あるいは水酸化カルシウム水酸化カルシウム・グリセロール混和物を2mm重層し,ZOEと反対側の水酸化カルシウム面を半透膜で被包後,生理的食塩水に浸漬し,経時的に溶液中の^3H-ユージノール量を測定した。その結果,^3H-ZOEから水酸化カルシウム・蒸留水混和物を通過して遊離するユージノール量は.実験開始後3時間でグリセロール混和物に比べ約5倍高かった。 2) ヒト抜去歯を窩洞形成後,横切断により髄腔を開放した。窩洞面に,1)の結果を反映して,よりユージノール透過性の高い水酸化カルシウム・蒸留水混和物を2mm填塞後,さらに^3H-ZOEを重層した。処置歯を生理的食塩水に浸漬し,歯髄側の^3H-ユージノール量を,窩洞面に^3H-ZOEのみを填塞した場合と比較し,経時的に測定した。その結果,^3H-ZOEから水酸化カルシウム・蒸留水混和物で裏層した象牙質を通過し,歯髄側へ遊離するユージノールは実験開始後2時間より観察され,実験開始後27時間で最大値447cpMを示した後,ほぼ平衡に達した。各時間において歯髄腔に遊離したユージノール量は,^3H-ZOEのみを填塞した場合に比べ有意に減少した。 以上の結果から,歯髄鎮痛消炎療法を行う際,水酸化カルシウム・蒸留水混和物を窩底に応用し,さらに酸化亜鉛ユージノールセメントを重層することで,歯髄組織に流入する遊離ユージノール量の調節が可能となった。また,歯髄組織に流入するユージノール量の抑制は,歯髄為害性の減弱に有用であることが強く示唆された。
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