研究概要 |
我々は宿主防御機能に着目した新しい歯周病診断を確立するためのモデルとしてハンセン病患者の歯周病病態を把握することを目的に,1)ハンセン病病型を考慮した上でハンセン病患者の歯周病の病状を整理すること,2)EOP患者および健常者の歯周病細菌(A.actinomycetemcomitans,P.gingivalis,P.intermedia,C.ochracea,F.nucleatum)およびM.lepraeに対する末梢血単核球の応答性を評価することを行った。その結果は以下のとおりである。 1) L型患者349名およびT型患者86名について歯周病の病状を検診した結果,両病型の患者群間において平均ポケット深さ,plaque index,gingival indexおよび骨吸収率において有意な差は見られなかった。 2) T型患者のP.gingivalisに対する血清IgG抗体価はL型患者のそれに比べ,またL型患者のF.nucleatumに対する抗体価はT型患者のそれに比べ高い傾向にあった。 3) EOP患者由来末梢血単核球は健常者のそれに比べて,C.ochraceaに対して低い増殖応答性を示す傾向にあった。IFN-γはすべての患者において若干ながらも検出された。また,IL-6はEOP患者,健常者に関わらず高い産生性が認められた。IL-4はすべてにおいてまったく検出されなかった。また,患者および健常者のTNF-a産生について調べた結果,抗CD3抗体による非特異的な刺激時において,健常者に比べ患者の方がより多くのTNF-α産生を示すのに対し,歯周病細菌およびM.lepraeに対する特異的な応答においてはその逆であった。この結果は歯周病細菌とM.lepraeに対する応答の共通性をTNF-α産生性によって示すことができる可能性を示唆するものである。
|