研究概要 |
細菌による易汚染性および易劣化性が深刻な問題となっている義歯床用材料の1つであるティッシュコンディショナーの改善を目指して,持続的抗菌性を有し,生体安全性が確認されている抗菌性セラミックス,銀ゼオライト(AJ10N,品川燃料社製)をティッシュコンディショナーに応用し,その抗菌効果および動的粘弾性特性の変化について明らかにしてきた。しかしながら,銀ゼオライトを添加したティッシュコンディショナーが口腔組織に及ぼす影響は明らかでない。そこで本研究では,in vitroにおけるティッシュコンディショナーの細胞毒性について検討した。 銀ゼオライトを5種類の市販ティッシュコンディショナーに対して0,2,5wt%それぞれ添加した後,ヒト線維芽細胞をコラーゲン内に三次元的に封入した組織モデル上に暴露し,MTT法により細胞生存率を算出して細胞毒性を評価した。その結果,GC Soft-LinerとSR-Ivosealは,銀ゼオライト添加量の増加により細胞毒性が強くなったのに対して,松風ティッシュコンディショナーは,銀ゼオライト添加の影響を受けず,添加量0%の場合においても他のティッシュコンディショナーと比較して細胞生存率が高く,細胞毒性は最も弱かった。 以上の結果より,銀ゼオライトを添加したティッシュコンディショナーの細胞毒性は各ティッシュコンディショナーと銀ゼオライト添加量によりそれぞれ異なることが明らかとなり,同ティッシュコンディショナーの口腔粘膜組織に対する影響に関する有益な知見を得ることができた。
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