研究概要 |
前報では,CAD/CAMシステムを用いて作製されたセラミッククラウンの厚みが,強度に与える影響について検討し,実際の補綴物の破壊様式が有限要素法を用いた構造解析を十分裏づける結果であることがわかった.しかし,構造的な問題だけではなく,加工時の応力がセラミックス材料の機械的性質に大きな影響を与えると考えられる.そこで,現在当教室において開発しているCAD/CAMシステムを用い,加工速度と曲げ強さの関係について検討を行った.オリンパス光学工業製のOCCブロックから,CAD/CAMシステムを用いて3X4X18mmの寸法の試験片を切削加工により製作した.このNCデータの加工条件は,1回の切り込み量を500μm,加工ピッチを500μmとし,加工速度を毎分100,200,300mmと変化させたものと,加工ピッチを半分の250μm,加工速度を毎分100mmの4条件で試験片を作製した.これに対して,精密低速切断機を用た同一形状の試験片を製作しコントロールとした.この試験片表面を表面性状測定器(SURFCOM480A:東京精密)を用いて観察したところ,500μmピッチで切削加工を行った各試料の表面粗さはRmaxで15μm前後,250μmピッチでは13μm前後と,計算上出来る筈の加工溝の深さより,500μmピッチでは6μm前後小さく,250μmピッチでは7μm前後大きくなった.これは脆性材料を切削することによる鋭縁の破折や,加工ツールのぶれなどによって起ると考えられた.これら試料の曲げ強さは170〜230MPaであり,加工速度が大きくなるにつれて低下する傾向が認められた.また,それぞれの試験片をSEM観察したところ,加工速度が速くなると,加工ツールのつけた溝に微細な凹凸が増えていた.また,250μmの試験片では,さらに曲げ強さの低下が見られた.これは,加工回数が増える事により振動などの因子が応力となり,セラミックス内部で亀裂の発生などを促進するのではないかと考えられた.
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