研究概要 |
申請者らはこれまでインプラント材を目的として,チタン表面へ電解液中放電現象を用いて,リン酸カルシウム系セラミックスの薄膜コーティングを検討してきた.本研究では新たにVp 800Vまで電圧を印加できるように改良したサーボ付きパルス電源を用いて,チタンの電解液中放電処理について検討した. 電解液中で被処理材であるチタン板を陽極に,白金板を陰極に対向させ電圧(Vp250V)を印加し,陽極近傍で発生するガス層を介して放電現象を発生させ,チタンの表面改質を行った.次に,この処理チタン板を極性を反転させ陰極で電圧(Vp200)を印加することにより,電解液成分のコーティングを行った. SEM観察により陽極処理後のチタン板表面は放電痕を有する表面性状であった.陽極陰極では,微小な構造物が厚さ5μm程度で集積した表面性状が観察された.X線回折から陽極処理後のチタン板表面には,Ti,TiO_2(anatase)が確認され,陽極陰極処理後のチタン板表面からは,HAPが確認された.EDX分析により陽極処理後のチタン板表面からは,PおよびCaが確認され,酸化膜は電解液成分を含有していることが確認された. 電解液中放電処理では,陽極処理により,チタン板表面にP,Caを取り込んだTiO_2(anatase)の酸化膜が形成され表面改質を行うことが可能であった.また,陽極陰極処理では,従来使用してきた試作電源がVp 180Vであったのに対し,今回試作した電源では印加電圧を十分に上昇することができるため,チタン表面の放電現象による電界や熱により,コーティング層の結晶性が向上し後処理を行うことなく良好なコーティング層を形成することが可能であった.また,前処理に陽極処理を用いることにより,チタン表面の酸化膜をコントロールすることで,チタン板を陰極に用て処理を行ったときに,より安定した放電を行うことが可能であった.
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