研究概要 |
目的:顎口腔系の状態と全身状態との関連をより明確にするためには,その伝達経路や影響の局在を明らかにしていく必要があると思われる。耳鼻科などにおける平衡機能検査では静的な重心動揺の測定の後,病側,病巣部位の診断のために電気性身体動揺検査が行なわれている。これは一側耳後部に電気刺激を加えると誘発性の身体動揺が起こることから,その反応波形より前庭迷路系の診断と経過推定に用いられている。そこで今回は咬合間係の変化が迷路電気刺激時の重心動揺に及ぼす影響について検討した。 方法:測定は健常者を被験者として重心動揺計の上に閉眼閉足位にて直立させ迷路に電気刺激を加え誘発される重心動揺を記録した。電気刺激は被験者の耳後乳突部に刺激電極を,前額部に不感電極を貼付し,通電時間3秒間,電圧10Vの刺激で行った。咬合条件は,下顎安静位,咬頭嵌合位における最大かみしめである。 結果:重心動揺は電気刺激時,下顎安静位において動揺に変化が見られたが,最大かみしめでは変化は見られなかった。また刺激前を基準とした刺激中の平均的重心位置の比較においても,すべての被験者において下顎安静位に比較して最大かみしめ時に値は小となる傾向が認められた。これはかみしめによる顎口腔系の変化は,前庭迷路系に影響を与え重心動揺を少なくしたことによるものと考えられる。今後は顎関節症患者を用い電気刺激時の重心動揺を測定することで,顎関節症の全身への影響についても検討を加えて行く計画である。
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