研究概要 |
1. 目的 近年,機能並びに形態の改善を目的として,唇顎口蓋裂を含む顎変形症患者に対する顎矯正手術が積極的に行われるようになり,手術前後の定量的な評価も検討されてきている。この評価に際して,手術前後の咬合接触状態,咬合力,下顎運動などを把握することは,適切な治療方針をたて,さらには治療効果を判定する上で重要なことである。 そこで今回,顎変形症の患者について術後の下顎位がより安定性する適切な咬合の与え方を確立することを目的として,手術前後の咬合状態,下顎運動ついて比較検討した。 2. 被験者および方法 被験者は平成9年から平成10年に本学補綴科に顎矯正手術を前提に来科した,顎変形症患者(男性5名,女性11名,平均年齢22.9歳)16名である. 測定方法は,まずモデルサージェリー時の歯の変位量を下顎の移動量として測定し,また,咬合状態はOCCLUZER FPD-703(シモレックス社製)を用い,下顎運動は6自由度顎運動測定装置CONDYLOCOMP LR3(STRING社製)を用いて測定した。これらは,手術前,顎間固定解除後1,3,5,7週間後の5回測定した. 3. 結果 1) 咬合状態 接触点数は,顎間固定を解除後1週以内では術前と比較していずれも減少傾向を示し,その後5週までほぼ回復し,7週では術前の約2倍に増加した. 接触面積は,顎間固定を解除後1週以内では術前と比較していずれも減少傾向が見られたが,その後7週までに術前の約1/2まで回復した. 咬合力は,顎間固定を解除後1週以内では術前と比較していずれも低下が見られ,その後7週までにほぼ術前レベルまで回復した. 2) 顎運動 顎間固定解除後1週以内での運動範囲は,術前と比較していずれも減少傾向を示したが,5週までにほぼ術前の範囲まで回復した.
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