研究概要 |
本研究課題は,円板の転移あるいは顆頭の骨変形をともなう顎関節の顆頭位をどのように考えるか,という問題点に対して,CT画像とMR画像の位置あわせにより軟組織を含む顎関節の三次元構築を行い,臨床検査法として顆頭位の画像診断法を検討することが目標であった.しかし,CTの骨の解像度に比べ,MRでは円板や後部組織の解像度が低く,また撮像時間が長いので連続断層像としてCTと等価のボリュームデータを得るのが困難であった.そこで,CTから構築像を作製し,その骨関節隙を三次元的に計測することで顆頭位と顆頭形態の評価法について検討した.また,上顎咬合平面との関係にも着目した.関節窩と顆頭を構築する構成点の3次元的な最短距離を算出し,構成点での骨関節隙の量(D)とした.骨関節隙の様相は1mm毎の5段階で顆頭の構築像上に色分けして表示した.また,Dの各段階ごとに,隣接する3個の構成点で規定される部位の面積の総和を算出し,有歯顎者3名について咬頭嵌合位で顆頭の位置を評価した.その結果,上顎咬合平面を基準とした座標系上での左右の顆頭の位置は前後的および上下的にほぼ同じ位置にあった.顆頭形態の計測値の平均は,左右内側極間:93.4mm,長軸:19.9mm,長軸と矢状面の角度:79.5゚,咬合平面との角度:4.7゚であった.Dが5mm以下の部位は顆頭の後方が前方よりも大きく,殊に後方中央で高い.Dが1〜2mmの部位は顆頭前上方で弓状に存在し,後片中央にもみつけた.Dが1〜2mmの占める割合は,関節の外側で高く内側ヘ向かうにつれ小さくなり.外側部は1〜2mmの間隙をもって対向する部位が多いことを示す.これは,咬頭嵌合位での関節窩と顆頭の形態は外側がより適合していることを意味し,円板の非薄部や顆頭の形態変化が外側に多いことに繋がるものと推察でき,本法が有用な顆頭位の画像診断法であることが確認できた.
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