研究概要 |
ddyマウスを用い,有機塩素系化合物を腹腔投与後経日的に屠殺し,舌,頬粘膜,歯肉を切除した.一部を光顕用にホルマリン固定後,残りは,ホモジナイズし生化学的検索用に保存した. 固定した組織は通法通りパラフィン包埋し,その薄切切片をHE染色後,光顕観察を行った.その結果,投与群において濃度依存的に,歯肉および頬粘膜において,空胞様変性をはじめとする組織学的変化がみられた.舌においても相対的に弱いものの同様の変化がみられた.しかしながら,それらの変化は唾液腺組織ほどの変化ではなかった. 生化学的検討としては,以下の測定を行った. (1)薬物代謝酵素の測定は,AHH活性,NADH-cytochrome c reductase,NADPH-cytochrome c reductaseについて行った.これらの活性はすべて上昇していたが,その時期は,形態学的変化の起こる前であった.(2)vitamin Aおよびβカロチン量は,HPLCカラムを用いて,組織内のvitamin A量およびβカロチン量を測定した.投与群では濃度依存的にしかも形態学的変化と前後して両者とも減少していた.(3)Lysosome酵素としてはcathepsin B,D,E,H,Lおよびacid-phosphatase,β-glucuronidaseについて,蛍光光度計および分光光度計を用いて測定した.その結果,カテプシンBおよびH,acid-phosphataseの上昇がみられた.(4)増殖因子,接着分子,癌関連遺伝子に関するwestern blottingの結果TGF-β,EGF,p53,c-erbBに変化がみられた. 以上より,有機塩素化合物の投与により,組織学的変化と生化学的変化が起こり,癌関連遺伝子の発現もみられることから,癌化に関連するような変化が起こっている可能性が示唆された.
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