研究概要 |
1. 人工材料による下歯槽神経欠損部架橋に関する実験的研究 ウサギの下歯槽神経欠損部(10mm)にポリエーテルアルコールチューブを移植した.対照にはシリコーンチューブを用いた.移植手術後、動物を12,24,40週後に屠殺し、光学顕微鏡を中心に神経再生状態の形態学的変化を観察した.その結果、両群共に良好な神経組織の再生が認められ、啓示的に有髄神経線雑数の増加が認められた.ポリエーテルアルコールチューブ移植群においては、シリコーンチューブ移植群に比べ神経周膜様構造の形成が多量に認められた.これはチューブ内外の体液交換が可能なポリエーテルアルコールチューブの特徴的所見と考えられた.以上の研究結果については、第51回日本口腔外科学会総会、第42回日本口腔外科学会総会において発表した.現在、人工材料への神経栄養因子の付加、及び神経修復後の三叉神経核の変化についての研究を行っている。 2. 神経移植後の口腔知覚機能の回復について 現在口腔外科領域では、下顎骨切除手術に伴う神経損傷に対して、神経縫合や神経移植などの神経修復手術が行われている.このうち神経移植手術症例の知覚回復過程をSW知覚テスターを用いて観察を行ったところ、術後約6ヶ月で機能的に良好な知覚閾値にまで回復するのが確認された.また、下歯槽神経引き抜き裁縫合法に対しても同様の観察を行ったところ、神経移植症例に対して早期の知覚回復が得られることが確認された.今後はこれらの結果をもとに、人工神経の臨床応用への可能性について基礎と臨床の両面より解明していく予定である.
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