研究概要 |
ラットに実験的口底炎を作製し,同部へのABPCの移行を検討した。 Wistar系雄性SPFラット(9週齢)96匹を使用し,起炎菌としてS.aureus Smith株1X10^7cells/100μlの用量で口底部に接種した。予備実験にて接種72時間後の口底組織を顕微鏡下に,感染巣の成立を確認した。前述の方法にて感染させた感染群(48匹)と非感染対照群(48匹)の2群に分類した。両群とも,薬物投与24時間前より絶食させ,薬物投与1時間前まで自由飲水させた。感染群および非感染対照群それぞれに,ABPC.Naを100mg pot./kgの用量で経口投与した。ABPC.Na投与後0.25から4時間に頸静脈より採血し,血清を得て定量用試料とした。採血後ただちに頚椎脱臼により致死させ,口底組織,舌および顎下腺を採取した。採取した組織は,付着している血液を洗浄除去後,重量を測定し,pH6.0,1%リン酸緩衝液を加えホモジネートを得て,遠心分離後,上清を定量用試料とした。ABPCの定量は,M.luteus ATCC 9341株を検定菌,antibiotic medium No.1を検定用培地とするpaper disk法で行なった。標準曲線は,pH6.0,1%リン酸緩衝液を用いて作製した。得られた結果を薬物速度論的に解析を加え以下の結果を得た。血清,顎下腺および舌のパラメーター値を比較すると,感染群および非感染群の間で大きな差は認められなかった。しかし,口底組織では,非感染対照群に比較し,感染群の,AUCおよびCmaxが大きな値を示していた。 以上の結果より,口底部の感染組織は,感染により生じた炎症性変化により,ABPCが感染部局所に良好に移行していることが推察された。
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