研究概要 |
これまでの研究からS.mutans(MT8148株)を種々濃度のショ糖を含む培養液中で培養するとGlucosyltransferaseおよびFructosyltransferaseの転写発現量は濃度依存的に増加していることがtotalRNA抽出後のNorthernblottingにより明らかとなった.このことはショ糖によって上記両酵素が誘導されることを示している. さらに粘着性不溶性グルカンを産生する変異種を用いてGlucosyltransferaseの構造遺伝子を解析するとgtfBとCがtandemに存在していることが明らがとなった.そこでGlucosyltransferase誘導機構を解明するために調節遺伝子領域を採取してクロラムフェニコールアセチル転移酵素(CAT)遺伝子と融合し,ショ糖により活性発現がどのように変化するかを調べた.その結果,ショ糖による転写開始にはある程度の長さの調節遺伝子が必要なことが判明した.現在さらにその部分の塩基配列を特定すべく研究を続行している.また調節遺伝子の特定塩基配列と結合する転写因子が存在するか否かをゲルシフトアッセイで解析した.ショ糖によりGlucosyltransferaseの発現が促進しているS.mutansより抽出した成分と,調節遺伝子の5上流領域の塩基配列を有するプローブをhybridizeさせたところ,プローブと反応するバンドが認められた.一方ショ糖処理を受けていないS.mutansでは認められず,現在このバンドはどのような成分がを明らかにすべく,細胞抽出液からの分離精製を行っている.う蝕発症におけるグルカンの重要性,その産生に関わるGlucosyltransteraseの重要性は多くの研究者が指摘してきたことである.この酵素活性を調節することでう蝕を抑制しようとする試みも行われてきたが,いまだにその効果は不十分である.本研究で進めている酵素の転写レベルでの調節が可能となればこれまでにない新しいう蝕予防法を開発できるものと信ずる.
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