研究概要 |
(1) ヒト末梢血から末梢血単核球(PBMC)を採取し,破骨細胞の前駆細胞を含む細胞集団として用いた。培養1週間後からTRAP陽性多核細胞が出現し始め,培養2週間目で約60%を占め,4週間目ではかなりの核数を有する巨細胞となった。 (2) ヒト歯根膜由来線維芽細胞(PDL cells)を,filterを介して液性因子のみが作用する状態でPBMCとcocultureを行うと,PBMCからのTRAP陽性多核細胞への分化は抑制された。 (3) PDL cellsを直接接触させて培養すると,牛象牙質上に有意に多くのpitを形成した。骨芽細胞株MG-63にこの効果は無かった。また,破骨細胞と骨基質との接着に関与するインテグリンαvβ3の発現を共焦点レーザー顕微鏡により発現解析を行うと,その発現はPDL cellsとの直接接触により増強していた。骨吸収時に発達するactin ringの形成とシグナル伝達に働くc-srcの発現も類似した増強を示した。 (4) progeniterの条件を検討するため,promyelocyteの性質を示すHL-60とmonoblastの性質を示すTHP-1を用いて比較検討したところ,PDLと直接接触させて培養したHL-60から多数のTRAP陽性多核細胞が形成された。 これより,破骨細胞の分化過程において歯根膜線維芽細胞は,液性の破骨細胞形成抑制因子の産生により破骨細胞数を減少させ,一方で直接接触により破骨細胞の吸収活性を促進するという相反する2つの作用機構を有することが示唆された.また,promyelocyteの細胞株より破骨細胞が形成されたことより,破骨細胞のprogeniterの条件として,分化段階が関与していることが推察された。(734文字)
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