研究概要 |
様々な細菌の染色体やプラスミドに広く存在している動的な遺伝因子の一つである挿入配列は,ある部位から他部位へと両部位間での遺伝的相同性を必要とせず,各種突然変異の誘発や,遺伝子発現の調節,染色体の再編成に関与する。既報において,挿入配列IS200と相同性のあるISAalの塩基配列をFDCY4株の染色体DNAの4.3kbと5.2kbのEcoRI断片で決定した。歯周病関連細菌のActinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)の挿入配列ISAalの1部をプローブとしてサザンブロットを行ったところ、すべてのAa臨床分離株で少なくとも1つ以上のハイブリダイゼーションバンドが検出された。バンドのパターンによって、臨床分離株は、いくつかのグループに分類することができた。また、血清型の異なる菌株の染色体DNAを鋳型として、ISAalを標的としたPolymerase chain reaction(PCR)を行ったところ、アニーリング温度がプライマーのTm値に近い時、予測される大きさに増幅される菌株と効率よく増幅されない株が認められた。予測される大きさに増幅される菌株の増幅産物の大きさを比較したところ、わずかに差があることが明らかになった。アニーリング温度を下げると、効率よく増幅されなかった株においても、増幅産物が検出されたが、増幅量は少なく、大きさも予測されるサイズとかなり異なっていることから、非特異的な増幅の可能性がある。本研究で明らかにされた遺伝的多様性がAa菌株間の病原性、抗原性にどのように反映されているのかは今後詳細に検討する必要がある。
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