研究概要 |
前年度,differential display法により得られたエナメル芽細胞に発現している遺伝子のシークエンスをもとに,それぞれのクローンからT3,T7 RNA Polymeraseを用いてDIG標識RNAプローブを作製し、in situ hybridizationに用いた。さらにクローニングしたシークエンスをもとにプライマーを作製し,エナメル芽細胞の3分割したステージごとにRT-PCRを行いクローンのスクリーニングを行った。その結果,エナメル芽細胞に時期特異的に発現していると思われる5つのクローンが得られた。それら5つのクローンのDNA配列は既存の遺伝子とホモロジーはあるが、新規の遺伝子である可能性が高かった。また,in situ hybridizationとRT-PCRから,それらの発現はすべて基質分泌期のエナメル芽細胞に多く,成熟期前期以後はシグナルが消失していた。また、程度の差はあるがそれぞれ骨芽細胞にも発現が認められた。そのうちの一つのクローンである,I6-cクローンはエナメル芽細胞・象牙芽細胞・骨芽細胞に特異的に発現しており,硬組織形成過程でなんらかの関与をしている可能性が考えられる。また,エナメル芽細胞のRT-PCRからfibronectinのシークエンスが得られ,成熟期後期に多く発現していることがin situ hybridization法・免疫組織染色法により確認された。このことから,エナメル芽細胞が鉄を分泌する時期の前後で,fibronectinが何らかの役割を果たしていることが推測される。
|