研究概要 |
外来で診療中の小児の口腔から6〜8mlの貯溜全唾液を遠心分離用のチューブに直接採取し、細菌や食物残渣を除去するために15,000rpmで10分間の遠心分離を行い、上清のみを回収した。また、ウシの下顎切歯から作製した同一規格のエナメル質ブロック表面を30秒間60%リン酸で酸処理した後水洗・乾燥した。各唾液試料1つにに対して10個のエナメル質ブロックを、φ35mm×H10mmのディスポーザブルの蓋付シャーレに並べて固定し、4mlの唾液上清を加え、室温で2時間振盪して獲得被膜を形成した。2時間後にエナメル質表面を充分水洗・乾燥し、獲得被膜をスケーラーで採取して水解管に入れ、凍結乾燥した。これに6規定塩酸を加えて脱気した後、減圧封管し、24時間加水分解した後、日立L-8500形高速アミノ酸分析計で分析した。また、100μlの唾液を凍結乾燥し、この5μl相当を同時に分析した。小児歯科外来での齲蝕治療には必ずラバーダム防湿が行われており、これによって1回の診療時間内で患児に負担をかけることなく必要な量の唾液が採取できた。合計17人の患児(3歳6ヶ月〜13歳7ヶ月、平均7歳9ヶ月)について分析を行った結果、獲得被膜のアミノ酸組成では、グルタミン酸、グリシン、プロリンが多かった。これは、貯溜全唾液のアミノ酸概形とは明らかに異なる組成比を有するタンパク質によって獲得被膜が構成されており、年齢、性別、全唾液のタンパク質濃度に関わりなくほぼ一定の組成比となることを示していた。この結果は以前に行った成人被験者の唾液から形成・採取した獲得被膜のデータと近似していた。10歯面から採取した獲得被膜のアミノ酸量は約5.4〜26.2μg(平均11.4μg)であった。また、貯溜全唾液を分析した結果、唾液1ml当たりのアミノ酸量は約240〜1790μg(平均1147μg)であった。
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