研究概要 |
ロジウム(II)錯体触媒を用いたイリド形成反応を機軸とする骨格構築法の開発を目的として,本年度は以下の研究を行った. ロジウム(II)錯体触媒を用いる環状カルボニルイリドのエナンチオ選択的1,3一双極付加環化反応は,ロジウム(II)錯体が結合したイリドでなく,遊離イリドを経て付加環化反応が進行すると考えられていたためほとんど報告例はなかった.我々は,当研究室で開発されたN-フタロイルアミノ酸を架橋配位子として組み込んだロジウム(II)錯体を用い,イリドがロジウム(II)錯体との結合を消失する前に親双極体と反応する反応系の探索を行った.六員環カルボニルイリドの前駆体に1-ジアゾ-5-フエニル-2,5-ペンタンジオンを設定し,アセチレンジカルボン酸ジメチルとの1,3一双極付加環化反応を検討した結果,溶媒にペンゾトリフルオリドを用い,ロジウム(II)N-フタロイル-(S)-バリナート錯体[Rh_2(S-PTV)_4]を触媒とした時に付加環化体が不斉収率59%で得られることが判明した.この結果は,付加環化段階でロジウム(II)錯体がカルボニルイリドと結合していることを強く示唆した.さらに高いエナンチオ選択性の獲得を目指し,フタルイミド基にベンゼン環が一つ伸長した新規錯体Rh_2(S-BPTV)_4を合成し,本反応に適用したところ最高不斉収率92%を実現することができた.Rh_2(S-BPTV)_4を触媒とする本反応は,C5位置換基が種々のp一置換フェニル基やアルキル基の場合,さらに五員環および七員環カルボニルイリドを経る反応にも適用可能である.また,o一位にエステル基を備えたα-ジアゾアセトフェノン誘導体を基質とした場合にも高い不斉収率が得られており,現在さらなる反応系の拡張を検討している.
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