研究概要 |
これまでシクロブタノン型キラル合成素子は,酵素法による不斉化反応を経て合成されていた.触媒法による新たなシクロブタノン化合物を活用するエナンチオ制御合成法の確立を目的とし,メソ対称シクロブタン型3環性基質をキラル資源化する手法を検討した. まずビシクロ[2.2.1]ヘプテン骨格をバックグランドに持つメソ型1,2-エンジオールビスシリルエーテルとアセトアルデヒド単位を縮合させ2-メチルシクロペンタン-1,3-ジオンとし,次いでこれを還元的にラセミのエンド-2-メチルシクロペンタジエン-1-オールに変換した.これに対して[{RuCl_2(η^6-mesilylene)}_2]と(1S,2S)-1-N-(p-tolylsulfonyl)-1,2-diphenylethylenediamine(TsDPEN)の錯体の存在下にアセトンへの不斉水素転移反応を行い44%の収率,87%eeの(+)-エノン体と37%の収率,98%eeの(+)-アリルアルコールが生成することを見出した.後者は酸化により対掌体(-)-エノン体を与え,また両対掌ケトン体はWharton反応を含む3工程で相互にエナンチオメリゼーションが可能であった.ここで得られたキラルな2-メチル-1-ケトジシクロペンタジエンのキラル素子としての機能性を発現させるため抗菌性天然物(-)-chokol Gの合成を検討し,コンベックス面選択性と逆ディールス・アルダー反応を経て,その最初のエナンチオ制御合成を達成した.
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