研究概要 |
私は以前に、カブトガニの生体防御ペプチドtachyplesinから誘導して、AZTに匹敵する抗HIV活性を有する18残基のベプチド性化合物[Tyr^<5,12>, Lys^7]-polyphemusin II(T22)を見い出した。T22は、ケモカインレセプターCXCR4(T細胞指向性HIVのcoreceptor)に特異的に結合し、T細胞指向性HIVの感染を阻止することを見い出した。さらに、T22と逆転写酵素阻害剤のin vitroでの併用試験において、抗HIV活性の相乗効果を示すことから、前年度、T22誘導体に逆転写酵素阻害剤AZTを化学的に付加させた化合物AZT-T22-conjugateの合成を行った。その合成品のうちいくつかは、AZTやT22単独と比べてかなりの抗HIV活性の上昇が見られ、また、T22のアミノ末端とAZTの5'位のアルコールをコハク酸をリンカーとしてつないだconjugateは、生理的pHで経時的にAZTをリリース(半減期=約12hr)することを確認した。今年度は、T22よりもさらに高活性低毒性でかつ、低分子化された化合物(14残基のペプチドT134とT140)の合成に成功し、本化合物を用いて付加体の合成を行い、さらに有用な結果(次のような利点を持つ)を得た。1.逆転写酵素阻害剤の宿主細胞やHIV感染細胞へのターゲッテイングのキャリヤーとしてT140が機能する。2.逆転写酵素阻害剤の水溶性の低さを水溶性ベプチドT140を付加することにより改善できる。3.T140と逆転写酵素阻害剤を併用したときと同じような相乗効果が期待できる。このことから、本付加体のような化合物が実際の治療薬として開発できれば、今までの抗HIV剤の使用量を減らすことができ、副作月の軽減が期待できると考えられ、有用なエイズの治療法の一つになる可能性もあると思われる。
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