研究概要 |
一酸化窒素(NO)は、生体内において情報伝達、血管平滑筋弛緩等多岐にわたる生理作用に関与する分子として注目されている。この様な生理学的に重要な役割を果たすNOの性質を理解するためには、まずNOの化学的性質を理解することが重要と考え、筆者は有機分子とNOの反応を検討した。その結果、有機アミン類がNOによりN-ニトロソ化を受けることが分かり、またアミドの窒素原子上でもニトロソ化反応が進行することが分かった。更に、ジペプチドについてもN-ニトロソ化反応が進行し、立体障害の小さいアミノ酸由来の窒素原子が優先的にニトロソ化されることが明らかとなった。NOは少量の酸素が存在するとNO_2,N_2O_4,N_2O_3等、種々の窒素酸化物に変化する。そこで、有機アミン類とNOの反応機構を詳細に検討した結果、アミドのN-ニトロソ化、ジヒドロピリジン類の酸化はNOのみでも反応が進行することが示唆されたが、その他の反応については、極微量の酸素が触媒的に関与していることが明らかとなった。そして、その場合の主な活性種はN_2O_3であることが示唆された。即ち、NOに対して少量の酸素が存在する場合に生成するN_2O_3が基質を一電子酸化することから反応が開始され、その結果生成するNO_2がNOと反応しN_2O_3が再生する機構が証明された。その他、N-アミノ化合物の脱アミノ化反応が酸素存在下NOとの反応により進行することが分かり、かつ、この反応は水中でも進行した。この結果は、生体内におけるNOの消去という観点から興味深い。
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