研究概要 |
キヌレニン分解酵素は本来,トリプトファンの代謝中間体であるキヌレニンをアントラニル酸とアラニンに分解する働きを有する加水分解酵素である。申請者らは,本酵素反応の遷移状態において,合成化学的に調製困難なアラニンのβ-アニオンが生成し,種々の芳香族アルデヒドやプロパギルアルデヒドと反応して縮合生成物を与えることを見出した。さらに,得られたγ-ヒドロキシ-α-L-アミノ酸をラクトン体へと誘導してそのNOE測定を行い,γ-位の水酸基はR-配置を有することを明らかにした。次に,フルフラールなど5員環ヘテロ芳香族アルデヒドを本酵素反応の基質とした時に得られた炭素数8のγ-ヒドロキシ-α-アミノ酸をトランスアミラーゼの触媒する反応を利用してアミノ基をカルボニル基に変換した。得られたα-ケト酸は,細菌の内毒素(エンドトキシン)の非還元末端に存在する酸性糖3-deoxy-D-manno-2-octulosonic acid(KDO)が持っている「カルボキシル基→カルボニル基→メチレン→R-配置水酸基→炭素数4の側鎖」というγ-ヒドロキシ-α-ケト酸骨格の構築を達成した。さらに,この基本骨格の内,ヘテロ芳香族五員環(フラン)で代用されている炭素数4の側鎖を一重項酸素酸化とそれに続くNaBH_4還元を行い,側鎖炭素をカルビノール基に変換した生成物を得た。現在,最終生成物の構造を立体化学を含め検討している。
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