研究概要 |
FR901483はCladobotryum属菌代謝物から単離され,in vivoにおいて免疫抑制作用を示すユニークな構造のアザトリシクロ化合物である.平成9年度に到達した四連続不斉中心を有するアミノアルコール誘導体の環状ウレタン部分の加水分解は通常の反応条件では長時間を要し(2週間以上)本合成計画遂行上の障害となることが判明した.そこで加水分解条件につき詳細に検討した結果,封管中ジオキサンを溶媒とし水酸化リチウムを用いることにより大幅に反応時間が短縮できることが判明し(3日間)問題点を解決した.次いで酸性条件下でのアセタール開裂,脱水による環化により,FR901483合成に必要な酸素官能基及び立体配置を持つ三環性N,O-アセタール構造が構築された.本N,O-アセタールのアルキル化は平成9年度に確立したアンチブレッドイミニウムイオンを経由するモルファン骨格橋頭位のアルキル化法を適用することにより効率よく進行し,標的化合物が備えている全ての炭素骨格及び正しい立体配置が導入されたモルファン誘導体が合成された. 以上本課題研究において当該年度内でのFR901483全合成には到らなかったが新規モルファン橋頭位のアルキル化法を確立し,本法を経由する三環系基本骨格合成をモデル実験において実証した.さらに本法を基軸としたFR901483全合成研究の展開において,標的化合物が備えている炭素骨格及び5不斉中心が正しく導入された鍵化合物までの合成法を確立した.
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