研究概要 |
前年度に引き続きツボミゴケ属苔類について,またツボミゴケ属以外のヨーロッパ産苔類についても成分研究を行った.それぞれの有機溶媒抽出物の各種クロマトグラフィーを行うことにより,各成分を単離,精製した.また単離が困難なフラクションについては,申請,購入した紫外可視分光検出器を付随した高速液体クロマトグラフィーにより精製した.その結果,オオホウキゴケから新規パーオキシクパラン型セスキテルペノイド,新規パーオキシラブダン型および新規セコラブダン型ジテルペノイドを,その他に多数の既知化合物をそれぞれ単離した.新規化合物の相対構造は,主としてNMR解析を行うことにより決定した.しかし,相対立体構造の決定が困難であり,幸運にも結晶化した化合物についてはX線結晶解析により決定した.また,絶対構造未知の化合物については,CDスペクトルの測定,絶対既知化合物への化学誘導,あるいはX線結晶解析を行うことにより決定した.また,ツボミゴケ属以外の数種のヨーロッパ産苔類からも新規セスキおよびジテルペノイドと既知セスキおよびジテルペノイドを単離,構造決定した.今回のツボミゴケ属苔類の研究の結果とこれまでに行ってきた研究の成果とを併せ考えると,同族同種であっても地理的差異による化学成分の違いがあることをさらに裏付ける結果を得た.また,新規ラブダン型ジテルベンやパーオキシクパラン型セスキテルペンは,生合成課程を考える上で興味ある化合物であると考える.また,ヨーロッパ産苔類からの新規化合物の単離,構造決定は,これまでに行ってきた苔類の化学成分研究の資料の一部として新たな知見を得ることができた.今回,単離,構造決定した化合物の一部は,他の研究機関に依頼して活性試験をおこなったところ,数種の化合物にMMP阻害活性が弱いながらも見られ,また抗HIV活性,トポイソメラーゼ活性についても現在検討中である.
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