研究概要 |
リポソームをベクターとして、アンチセンス遺伝子治療に利用する際に必要な、保存に関するメカニズムを明らかにした。脂質二重層からなるリポソームは、乾燥や冷凍といった物理的ストレスを耐えられるようにすることが製剤学的に重要な鍵である。従来、二糖類による膜の構造保護効果が、現象的にはよく知られていたが、分子論的なメカニズムが全くわかっていなかった。そこで、まず、リポソームが微小胞体であることが物理化学的に解析を難しくしているポイントであることに着目し、展開単分子膜で検討する方法を探った。その結果、加温水和させた脂質単分子膜は優れたモデルであることを、蛍光寿命や表面圧測定などから証明した。これは、J.Phys.Chem.B101,6701(1997)に公表し、またPittsburgh Conference(New Orleans,LA)でfocus areaの口頭講演にも選ばれた。 その後、この条件で作成した糖と相互作用した単分子膜をLaogmuir-Blodgett(LB)膜として作成し、QCM(quartz-crystal microbalance)や赤外反射吸収(IRRA)法を組み合わせて解析した。この結果、糖が脂質膜にとりつくメカニズムを、初めて明らかにできた。これは、J.Phys.Chem.B102,8498(1998)に公表し、また日本分光学会の招待講演となった。 なお、この奨励研究の結果により、平成10年度日本薬学会近畿支部奨励賞を受賞することもできた。
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