研究概要 |
本研究では,肺胞II型上皮細胞から肺胞I型上皮細胞への分化制御機構を解明することを最終日的として,まず,本年度は肺胞II型上皮細胞が分化する際にどのようにして自身の特徴を失うのか,すなわち,脱分化機構に焦点をぼって検討した.本研究を遂行するにあたり,ラット肺胞lI型上皮初代培養細胞をプラスチックプレート上で長時間培養するとサーファクタント分泌能が低下するという知見に基づき,本培養系を肺胞上皮細胞の分化モデルとして応用可能か否かについて種々検討した.その結果,肺胞II型上皮細胞をプラスチックプレート上で長時間培養すると,肺胞II型上皮細胞は脱分化し,肺胞I型上皮細胞へ分化していることが示された.すなわち,II型細胞に特異的な蛋白であるsurfactant proteinのmRNA発現量が経日的に減少する一方,I型上皮細胞に特異的な蛋白の発現は増加した.興味深いことに,この過程でI型細胞様へ分化できないII型細胞は自然にアポトーシスとみなしうる細胞死をおこすことがわかった.(生細胞数の計測,細胞の微細形態観察およびDNAフラグメンテーション(in vitroおよびin situ)などの生化学的知見に基づく.)また,肺胞II型上皮細胞特異的遺伝子の発現調節にprotien kinase Cの活性化および転写因子TTF-1およびHNF3が関与する可能性が示唆された.現在,このアポトーシスを制御する調節蛋白の同定を検討中である.
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