研究概要 |
1. NO donorであるNOC-7は,基質(アラキドン酸(AA))が過剰な状況(60μM,病理的状態を反映する)では,ウサギ腎髄質ミクロソームにおけるAAからのアラキドノイル-CoA(AA-CoA)生成には変化を与えず,プロスタグランジン(PG)生成を有意に抑制すること,基質が過少な状態(5μM AA,生理的状況を反映する)では,PG生成の減少作用に加えて,AA-CoA生成を増加させることが判明している(平成9年度における結果)。そこで,これらNOC-7の作用がNOによるものかどうかを検討した。60および5μMのAAを基質として用いた場合のNOC-7(50μM)によるAA-CoAおよびPG生成の変動は,NO scavengerであるcarboxyPTIO(200μM)を併用することにより消失した。この結果より,NOC-7のAA-CoAおよびPG生成に対する作用はNOに起因することが確認された。 2. ウサギ腎髄質ミクロソームにおけるAAからのAA-CoAおよびPG生成に対する ONOO^-の影響を検討した。60μMのAAを基質として用いた場合,ONOO^-(50-200μM)はAA-CoA生成に対して有意な影響を与えなかったが,100μMまでの濃度でPG生成を促進させた(100μM,1.27倍促進)。このPG生成に対する促進作用は,ONOO^-の濃度を200μMに上昇させると消失した。一方,5μM AAを用いた場合,ONOO^-(50-200μM)は,AA-CoAおよびPG生成に対して有意な影響を与えなかった。 これらの結果より,NOおよびONOO^-は,腎髄質におけるAAからのAA-CoAおよびPG生成の調節因子になり得ること,それらの作用は基質濃度の違いにより大きく変化することが判明した。
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