研究課題/領域番号 |
09772024
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
医薬分子機能学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
斉藤 秀之 京都大学, 大学院・医学研究科, 講師 (40225727)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1997年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | ペプチドトランスポータ / 腸管吸収 / 尿細管再吸収 / β-ラクタム抗生物質 / 遺伝子導入 / 薬物輸送 |
研究概要 |
本研究では、2種のラットH^+/駆動型ペプチドトランスポータPEPT1またはPEPT2の安定発現上皮細胞系を新たに確立することにより各々の薬物認識特性の比較解析を実地し、以下の研究成果を得た。 1.ペプチドトランスポータ安定発現細胞の確立 動物細胞発現ベクターに挿入したラットPEPT1またはPEPT2cDNAを構築し、遺伝子トランスフェクションによって各々のトランスポータを安定に発現する上皮細胞の単離を試みた。ノーザンプロット解析によるメッセンジャーRNAの細胞内発現、ウエスタンブロット分析によるタンパク質発現、並びにジペプチドglycylsarcosine取り込み活性を指標としてスクリーニングを行い、最終的にPEPT1またはPEPT2安定発現細胞の確立に成功した。 2.PEPT安定発現細胞による薬物認識特性の比較解析 ラットPEPT安定発現細胞を用い、glycylsarcosine輸送に対する競合阻害効果に基づいてPEPT1とPEPT2の薬物認識特性の比較解析を試みた。PEPT発現細胞へのglycylsarcosine取り込みに及ぼす経口用β-ラクタム抗生物質の競合阻害実験を実施し、見かけの阻害定数(Ki)によって各薬物のトランスポータに対する親和性を比較した結果、PEPT2はceftibutenとcefiximeなどのアミノ基を持たない薬物を除き、多くのβ-ラクタム抗生物質に対してPEPT1よりも高親和性であることが判明した。 3.PEPT発現細胞によるペプチドトランスポータとβ-ラクタム抗生物質との相互作用解析 ヒスチジン修飾試薬diethylpyrocarbonate(DEPC)の処理によって、PEPT1及びPEPT2発現細胞のglycylsarcosine取り込み活性は消失すること、DEPCのトランスポータ不活化は、過剰のジペプチドまたはアミノ基を持つセファロスポリンによって防御し得ることがわかった。一方、アミノ基を持たないセファロスポリンやベスタチンはDEPC不活化に対する防御効果を示さなかったことから、薬物のアミノ基とPEPT分子内の必須ヒスチジン残基との相互作用がトランスポータの薬物認識機序に関わっている可能性が示唆された。 これらの研究成果は、ペプチド類似薬物の体内動態制御機序の解明並びにペプチドトランスポータの基質認識性を利用したドラッグデリバリーシステムの開発に有用な基礎的情報を提供するものと考えられる。
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