研究概要 |
口腔粘膜からの薬物吸収は,肝初回通過効果を回避でき,また胃酸に不安定な薬物にも適用できることなどから,経口投与が困難な薬物の投与経路として注目されている.しかしこれら粘膜からの薬物吸収機構は,受動輸送であると考えられており,イオン型薬物や脂溶性の乏しい薬物は粘膜上皮細胞層によりその透過が著しく制限されるため,充分な効果を発揮することが困難である.この粘膜吸収における一番の問題点である粘膜上皮細胞層の透過障壁を回避する目的で,本申請者は.口腔膜上皮細胞に薬物輸送の担体,すなわち薬物特殊輸送系が存在すれば,それら輸送担体を介した能動輸送により,効率よく薬物を送達させることが可能であると考えた. そして口腔粘膜上皮細胞層に薬物特殊輸送系が存在するか否かを,ウサギ初代培養口腔粘膜上皮細胞を用い検討を行い,本細胞上にモノカルボン酸を特異的に認識し,輸送する担体が存在することを明らかにした.本輸送系は従来より報告されていた小腸におけるモノカルボン酸特殊輸送系と同様の挙動を示した.さらに本輸送系は培養細胞レベルではなく,in vivoの口腔粘膜においても発現,機能していることを明らかにした.さらに中性アミノ酸.酸性アミノ酸,糖(D-グルコース)の特殊輸送系もウサギ初代培養口腔粘膜上皮細胞上に存在することを明らかとした. 以上の結果から,口腔粘膜上の特殊輸送系を介して,口腔粘膜より薬物を効率よく吸収,送達させることができる可能性が示唆された.
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